JIA Bulletin 2011年5月号/F O R U M 覗いて見ました「他人の流儀」 | ||
NOSIGNER氏に聞く 「デザインとは、人間が持っている本能的な編集能力」 |
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NOSIGNER氏 インタビュー風景 聞き手:Bulletin編集委員 |
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どうしてNOSIGNER と名乗っているのでしょうか?
NOSIGN(ノザイン) という言葉に気がついたのは、ちょうど事務所を開いた頃でした。デザインの語源を調べてみると、どうやらサインからきているらしいんですね。語源の意味では、「記号にする」つまり「形」を作ることがデザインだというのです。しかしそのデザインを「形にする」行為の前には、準備の段階がありますよね。そして、準備そのものが、自動的に「形」を作っていることが往々にしてあります。
すごく勇気のある決断でしたね。なかなかできないことですよね。
最初はNOSIGNER と名乗っていると、変な人だと思われたり、作品が良いものでないと批判を受けるのではないかという不安はありましたが、いや、今でも正直言うとあるのですが、NOSIGNER というのは、私のことであるというよりも、デザインに向かう哲学のことなんです。ですから、この事務所のことや、僕の職業がNOSIGNER なんですね。
新しい切り口で素材から開発したプロダクト。
そんなNOSIGNER さんの育った環境といったものをご紹介いただいてよろしいですか。どのような少年時代だったのでしょうか。
小学校ぐらいのときには、プラモデルつくることが好きな子どもでした。勉強はそれほど好きというわけではありませんでしたが、自由研究が好きでした。あとは、遊び方を発見することや、物の新しい使い方を発見することが好きでしたね。父が建築士だったので、自然と建築に興味を持っていたんでしょうね。そのころから建築家になりたいと言っていました。
自らをデザイナーとして意識し始めたのはいつでしょうか?
大学院のときに建築のワークショップで代表を務めたことがあり、「建築とは何か」という問いを真正面から向かい合ったのが一つのきっかけになりました。どうして建築なのかとか、何を持って建築とするのかとか、今までの建築の定義から発展していく次の道は何かという、建築に対して建築を問う状況を初めて迎えたんですね。
オープンソースプロダクトとして製作したプロダクト。
ミクロ的なところからデザインを始めてマクロへと広げていくと、建築になり、その集合体が都市になっていくと思うのですが、どこまでが視野に入りますか?
私は物の生成原理に興味があるので、小さいものと大きいものがスケールを超えて繋がっているフラクタルのような仕組みに興味があります。あとは、仕組みについて興味があります。たとえば、エネルギーのスマートグリッドのデザインでは、中央集権的にエネルギーが供給されていたものが、各家庭でエネルギーが作りだされるような取り組みが目指されています。こういう無形のデザインこそ、現代の都市計画なのではないかと思います。都市が成熟した後で、小さなきっかけのふるまいによって都市のエネルギー全体を再編集していく。例えばそんな仕組みを作ることに、デザイナーがかかわる事はできないだろうかと考えています。
建築と芸術の違いについては、どのようにお考えですか?
芸術とデザイン、そして言語は似ています。芸術とデザインではコミュニケーションの質こそ違いますが、その両方が僕らの言語的能力に由来していると考えています。たとえば日本語と英語の違いを論ずることにあまり意味がないように、その枠をそろそろ意識しなくてもいい時代だと考えてます。
香港で展示したインスタレーション。「WATERFUL」
デザイナーという職業は、一般の方には何をしているのか 分かりにくい職業ですよね。これは、建築家の悩みとも通 じるところがあると思うのですが、一般の方に対して受け 入れられるために実行していることがありますか?
なるほど。僕はデザインの価値の大きさを理解しているつもりですが、その表現についてデザイナーや建築家は、私も含めて総じて上手くはない気がするんですよね。例えば、「建築家と家を建てると満足感が高い」ということを可視化するだけでも、市場には説得力がありそうです。それが困難になっている。「我々が何をできるのか」の表現がうまくいっていないからだと思うのですね。僕自身が気を付けていることといえば・・・何でしょうか。例えば、そのデザインがどういう効果をもたらすか、実効性があるかを、なるべくきちんと説明するようにしています。理由があり、平易に説明できることは、いいデザインの条件だと思います。解かりにくいものを解かりやすくすることは、デザインの本質の一つですから。
良いものを作れば、自然に世間に受け入れられていくことだと思いますか?それとも受けいれられるような能動的行為が必要だとお考えですか?
必要だと思いますね。能動的な行為は、同じような考えを別の領域で持っている人たちとの接点を作るということにつながるからです。そういう出会いから、デザイナーが思ってもいないようなデザインの可能性を感じられることがあります。私はデザインが持っている大きな可能性に対して、建築家もデザイナーもマイノリティーすぎるような気がしています。デザインはこんなに役に立てるのだということを、デザイナーは声高に言った方がいい。
仕事としては理解されにくい中で、どのような形で依頼に結び付いていますか? そうですね、紹介やリピーターのほかに、プレスで紹介されることによって依頼に結び付いているケースが多いですね。トータルにデザインをしている実績から、物のデザインだけではなくて、ブランドのアートディレクションや展示の什器など総合的に依頼されることも多いです。最初の依頼の段階では、何を作ってもらいたいのかも分かっていないけれど何とかしたいと言われることも多くあります。そういう状況そのものを預けていただくことは、私にとっては嬉しいことです。
今後のデザインの方向性を示すキーワードは何だとお考えでしょうか。
グローバル、ローカル、サステイナブル、オープンソースの4つは気になっています。特にオープンソースに関しては既存の枠を壊していく様々な可能性を感じます。今の時代は、あまりにも専門分化されていて、それらをつなぐ軸を探すことが重要だと考えいています。オープンソースもその方法の一つですね。
〈聞き手:大川宗治 湯浅剛〉
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■NOSIGNER 太刀川英輔 プロフィール http://www.nosigner.com/ |
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