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JIA Bulletin 2017年271号/海外レポート

坂倉準三パリ展を訪ねて

大倉久明

大倉久明

 4月末から7月にかけて国際交流基金パリ日本文化会館にて「坂倉準三パリ展」が開催された。
 オープニングセレモニーおよびシンポジウムへの参加、展覧会視察、ル・コルビュジエ作品の見学などを含むツアーに参加した。パリでは1937年のパリ万国博覧会日本館の跡地を訪ね、80年前のパリ万博日本館について想いを巡らせた。


「坂倉準三パリ展」のポスター
 

展示会場風景

坂倉準三パリ展について

 「坂倉準三パリ展」は国際交流基金パリ日本文化会館の主催により、2017年4月26日から7月8日までの間開催された。坂倉準三の設計関連資料については、坂倉家および坂倉建築研究所により文化庁近現代建築資料館に寄贈され、2013年に同館で「人間のための建築―建築資料にみる坂倉準三」展が開かれた。今回の「坂倉準三パリ展」は、同展資料を中心にフランス国立公文書館資料、ル・コルビュジエ財団資料などを加え、坂倉準三をより多面的に捉える展示会へと発展させたものである。今展覧会用に制作された3D動画や模型、実物家具なども加わり充実した展示であった。
●展示内容
 会場構成は、鯵坂徹氏による、プロローグ部、Part 1〜4各部、エピローグ部から構成され、多くの坂倉準三作品に見られるスロープに触発された斜め方向に配置された壁面により、Z型に各展示部分が分節され、巧みな会場構成であった。
プロローグ部:1937年パリ万博会場全体模型
Part 1:Les Années 1930 à Paris/1930年代のパリ
・坂倉準三のル・コルビュジエ宛ての書簡
・コルビュジエアトリエでの担当作品図面(ソヴィエトパレス、アルジェ計画等)
 (ル・コルビュジエ財団所蔵)
・1937年パリ万博日本館図面(フランス公文書館所蔵)、同模型、1937年パリ万博映像
Part 2:L’architecture en Temps de Guerre/戦争と建築
・飯橋邸、高島屋和歌山店、戦争組立住宅等図面
Part 3:Le Musée à Croissance Illimitée/無限成長美術館
・国立西洋美術館模型(ル・コルビュジエ財団所蔵 仏文化財)
・神奈川県立鎌倉近代美術館(旧神奈川県立近代美術館鎌倉館本館)図面、模型
・1937年パリ万博日本館―鎌倉近代美術館の比較3D動画、国立西洋美術館の3D動画


パリ万博日本館(1937)、鎌倉近代美術館(1951)の比較

Part 4: Œuvres Emblématiques du Paysage Urbain Japonais/日本の都市風景となった作品群
・渋谷計画、市庁舎、研究所等建築関連資料
・東急文化会館緞帳糸サンプル(ル・コルビュジエ財団所蔵)
・坂倉準三設計家具(伊賀、羽島各市庁舎所有)
・動画「生命線(家具、建築に見られる有機的曲線)」
エピローグ部
・渋谷駅周辺スケッチ(1959年・2013年、田中智之(熊本大学准教授)作画)
・映像展示神奈川県立鎌倉近代美術館映像など
・図面コピー製本

レセプション

 「坂倉準三パリ展」の一般公開に先立ち、4月25日にレセプションパーティーが開かれ、我々ツアー一行もレセプションに参加することができた。レセプションには木寺昌人在仏日本大使、杉浦勉交際交流基金パリ日本文化会館館長、磯村尚徳パリ日本文化会館初代館長、今回展覧会実行委員長である高階秀爾氏(大原美術館館長)以下各委員(後述)のほか、坂倉竹之助坂倉建築研究所会長ほか、坂倉準三ゆかりの人々、日仏の建築関係者が集い、華やかながら親しみを感じさせるレセプションとなった。パリ日本文化会館は1937年パリ万国博覧会日本館の敷地に近いこともあり、時間/空間を超えた日仏文化の深い繋がりを感じさせる盛り上がりを見せた。

4月26日 オープニングシンポジウム

 展覧会のオープニングに合わせて、「坂倉準三がル・コルビュジエから学んだこと」と題したシンポジウムが4月26日に開かれた。会場は日仏の聴衆で満員となり、坂倉準三に対する関心の高さがうかがえた。シンポジウムは山名善之東京理科大学教授の司会で進められ、山名氏の坂倉準三の活動全般の紹介に続き、高階秀爾氏の基調講演「Autour de “Pavillon du Japon1937”/1937年日本館をめぐって」が行われた。ご自身も含めたパリ時代からの坂倉準三とル・コルビュジエの関係からより詳細な日本館の様子等についての講演であった。
 基調講演に続き、各実行委員による以下内容の講演が行われた。
・鯵坂徹鹿児島大学教授
 坂倉準三の市庁舎・パリ坂倉準三展の構成について
・萬代恭博氏(坂倉建築研究所)
パリ万博日本館の構成と配置
・北村紀史氏(魁綜合設計事務所)
 坂倉準三の家具
 なお、展覧会期中盤にはパリで活躍されている田根剛氏(ATELIER TSUYOSHI TANE [ARCHITECT])と長谷川香氏(東京大学大学院、元文化庁近現代建築資料館勤務)による2回目のシンポジウムが行われ、こちらも盛況であったとのことである。


4月26日 シンポジウム風景

 

現在の日本館敷地跡(トロカデロ庭園)
のシンボル的な樹木

1937年パリ万博日本館敷地探訪

 1937年パリ万国博覧会は、セーヌ川沿いおよびシャイヨー宮からエッフェル塔に沿って伸びる都市軸線を含む、非常に広大なエリアを会場敷地としたものであった。日本館の敷地は現在はセーヌ川右岸のシャイヨー宮(Palais du Chaillot)の足元に広がるトロカデロ庭園(Jardins du Trocadero)の一部分となっている。実際のその敷地はどのような場所なのかは、私にとって、長年、写真でのみ想像する場所であったが、今回パリ訪問中には数回敷地周辺を訪ね、敷地の高低差、アンジュレーションなどを確認し、おおよその日本館の配置の位置を推定をすることができた。植栽の現況なども確認を行った。
 博覧会配置図と日本館平面図、インターネット上の地図などをスケールを合わせて重ねてみたところ、現地で推定した日本館配置にほぼ合致するものであった。現地に現存する公園のシンボル的な樹木は、1937年の日本館の写真に見られるスロープの間の樹木と位置がほぼ一致していることもわかった。当時の樹木が現在公園内にあるシンボル的な樹木と同じ樹である可能性が高い。

今回のパリ訪問により、坂倉準三の日・仏両国の近代建築の創成と発展への測り知れない大きな寄与を、改めて実感することができ、貴重な体験となった。


1937年日本館配置図とインターネットの地図を重ねた図

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