建築家onlineは、日本建築家協会関東甲信越支部が一般の方々向け に建築や建築家についての情報をお届けするサイトです。


WWW を検索 サイト内検索
建築ガイド


東京中央郵便局

 東京駅丸ノ内南口に出ると、左側に一見何の変哲も無い白いタイルを貼った建築が見える。いうまでもなくおなじみの東京中央郵便局だが、改めて眺めていると、次々と超高層になって行く丸の内のビル群の中にあって、どことなく品格があり堂々とした存在感のあることに気が付く。
 この郵便局は1931年郵政建築のリーダー吉田鉄郎の設計によって建てられたが、大阪中央郵便局とともに、氏の代表作と言われている。当時の丸の内はコンドルの設計した赤レンガのオフィス、東京駅や日本工業倶楽部会館など茶系のレンガやタイルのビルが建ち並んでおり、丸ビルの外壁も茶系だったそうで、そのなかに建ったこの建物はひときわ目立っただろう。どうだ俺の建築は;と胸をはる吉田鉄郎の姿が絵眼に見えるようだ。
 客溜まりに入ると暗緑色の大理石を貼った八角形の柱がカウンターの前に立ち並び、高い天井の近くまで大きな窓が外部に向かって開いている。この空間のもう一つの魅力は、この窓の格子
を通して見る赤レンガの東京駅の姿だ。ここでも「なあ、いいだろうと;」と内心ニヤリとしている設計者の姿を思い浮かべるのは僕だけだろうか。

 昨年、JIAのイベントで内部の見学が出来た。各階の高い天井に驚いたが、31メートルの高さ制限の中で5層しかとってないのだから高いのは当たり前、でもこの高さが空調改変など様々な機能の変更に耐えて、郵便局という工場としての機能を損なうことなく現役で使い続けられる要素になっているのだ。
 建物の中に中庭が取られており、光が室内に行き渡り、なかなか使い心地がよさそうだ。目を引いたのはその中庭に面する外壁に、仰々しいともいえるくらいしっかりした耐震補強がなされていること。実はこの郵便局は、建替えられてしまうのではないかという単なる噂とはいえない危惧感が、常に建築界では囁かれている。JIAの保存問題委員会では、1999年9月郵政省と文化庁宛にこの建築を国の有形文化財として登録して欲しい旨、又今年になって石原都知事に東京都にある文化資産として検証して欲しいと要望書を提出したのも、その危惧を払拭したいと思ったからだが、回答が無い。



東京中央郵便局外観





東京中央郵便局客溜り
 補強を見て残すことになったのかとちょっと安心したのだが、今年(2003年)の6月3日、朝日新聞に「郵政公社貸しビル業も」という刺激的な記事が出た。法律を変えて自己所有の郵便局を壊して大型オフィスビルに建て替え、自由に賃貸できるようにするのだという。もともと国の所有、ということは税金で建てた建築群、何かしら問題があるような気がするが、この郵便局の存続を考えると、心穏やかではなくなった。
 もう一度この建築を見てみたい。無造作に穿たれている様に見える窓が、階によって微妙に高さを変え、4階と5階の間に帯を入れ、しかも5階の窓を引っ込ませるなど細心の心配りによってファサード・外壁面がデザインされていることに気が付く。
 柱と梁によって構成された日本の木造建築を思わせる傑作だと、ブルーノ・タウトに絶賛され、日本の建築界が目を開いたというエピソードが残されているが、重文に指定されたお堀端に建つ様式建築の華、明治生命本館より3年も前に竣工したことを考えると、この建築がいかに斬新でありその後の日本の近代建築に大きな影響を与えたことがわかる。
 ちなみにこの郵便局は、建築やその周辺の保存、資料収集をする国際組織、DOCOMOMO本部の要請によってDOCOMOMO・Japan(現)が選定した日本の近代建築20選に選ばれている。この建築が何時までも丸の内にあって光り輝いているよう、市民とともに僕達建築家も考え続けていきたいものだ。                
(2003・7兼松紘一郎記)



東京中央郵便局中庭外部耐震


東京中央郵便局より見る東京