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建築ガイド
建築保存物語
建築保存物語(11)東京中央郵便局(1931年東京都千代田区)-2-

写真と文 兼松紘一郎

モダニズム建築保存の原点を問う

 「重文の会」の設立は2008年3月15日。憲政記念館で設立発起人会(発起人は130人に及んだ)を行って活動をスタートした。前野まさる東京藝大名誉教授を代表に僕が副代表、多児貞子が事務局長として会の取りまとめと膨大な活動記録を整理収録してきた。他のコアメンバーは9人。その一人大橋智子は千代田区に事務所を持つ建築家で区との信頼関係があり区議会が動くときに大きな役割を果たしてくれた。南一誠は日本建築学会からこの建築は重要文化財を超える価値があるとの価値表明を得る。重文の会の活動(運動になった)は国会、区議会の傍聴や議員連との意見交換、8回に及んだビラ配り、各所でのシンポジウムの開催やサポート、HPの構築など多岐に渡ったが、活動を時系列で並べると中郵を巡る多彩な物語が明快になるが紙面がない。(本誌2011年11月号と日本建築学会の「学術講演概要集:建築歴史・意匠<2011年度大会(関東)>を参照下さい)振り返ると、建築に関わる僕たちや市民だけでなく、政治家や報道関係者など様々な分野の人たちがこれだけ真摯に建築と向き合った例を僕は知らない。

 千代田区議会は郵政株式会社西川善文社長に保存要望書を提出し、「国会議員の会」は文化庁を招いた勉強会で、この建築が重要文化財に値するという言質を得、国会の場でその確認を行った。それを受けた鳩山邦夫総務大臣(当時)のこの建物を壊すのは「朱鷺を焼き鳥にして食べるようなもの」という発言は語り草になったが、一夜にして「残す部分を多くすれば高層化やむなし」の一言で元の木阿弥。裏で何が起きたのか考えるまでもないがこの事実は、民営化見直しが囁かれる経緯があり、建築に内在する複雑な保存問題を象徴しているとも思えてくる。

 手元に2009年3月15日付の毎日新聞「討論」の記事がある。僕の相手は竹中平蔵慶応大学教授。小泉内閣で郵政民営化担当相、総務相を歴任し、郵政民営化をけん引した。竹中の論旨は「民営化した以上は経営判断に政治が介入してはいけない」というもので僕のタイトルは「価値伝わらぬ部分保存」。この時から背後を高層化したこの建築を「登録文化財」にするという報道がなされて危機感を持ったのだが、論旨がかみ合わなかった。

 JIA保存問題委員会が2009年7月に出した声明がある。趣旨は「外観に偏重した保存のあり様に対して内部空間の機能的再生や適応する活用案を模索し、モダニズム建築の保存へ向けてその大切さを伝える」だ。新春、改築なった内部を歩きながら中郵は何処へ行ったのかと思ったものだ。

東京中郵ロビー 窓
東京中郵ロビー 窓口
中郵を中心に
中郵を中心に
ロビーから観る東京
ロビーから観る東京駅

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