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建築ガイド
建築保存物語
建築保存物語(14)鬼北町庁舎(1958年愛媛県鬼北町) 

写真と文 兼松紘一郎

四国のまちから全国へ(1)

 穏やかな花曇の2014年4月2日、初めて庁舎を訪れてから5年。木造による庁舎増築棟の起工式で神主の神を呼ぶ祝詞を聞きながら僕は、ここには「人が居る」という不思議な感慨に浸っていた。

 愛媛県松山市から山地へ向けて車で約1時間半、鬼北町庁舎(町役場)は、アントニン・レーモンド事務所の設計によるHPシェルによる議場を持つ鉄筋コンクリート造の3階建て。設計を担当したのは地元出身の建築家で、事務所を法人化した時に初代の代表を担った中川軌太郎である。その子息、レーモンド事務所の総務部長中川洋から、この庁舎の存続が気になるので機会があったら訪ねて欲しいと議場の写真が同封された手紙を貰った。

 四国、遠い。でも八幡浜市の山地に建つ日土小学校(重要文化財)の増改修竣工記念シンポジウムの案内を貰った僕は、朋友の建築家藤本幸充を誘いあわせて3泊4日の四国建築ツアーを行った。そして外観だけでも観ようと立ち寄った日曜日、宿直室に居た職員から見学のOKを得た。テラゾーの床、打ち放しの柱や梁、色彩豊かなガラスブロックを上部の壁に埋め込んだシェルによる議場。我が青春、50年代から60年代にかけての建築の魅力に溢れている。職員がちょっと見てくれといって分厚い2冊の耐震診断書を持ってきた。めくると各所に補強のための耐震壁と多くのスパンに鉄骨によるブレースが書き込まれている。これでは役場として使えない。

 僕と藤本は「これがスタート、現行の建築基準法に準ずるとこうなる。しかしいくらでもやり方がある」と伝えた。そして帰京する日に、日土小の改修を担った建築家和田耕一を砥部町にある事務所に訪ねた。住民と町の職員にこの建築の存在する意義を伝えるシンポを鬼北町でやることを提言、その仕組みを考えるので地元を動かして欲しいと伝えた。

 翌2010年の4月25日、庁舎の隣の近永公民館で行ったシンポのタイトルは「鬼北町(旧広見町)庁舎保存再生を考える―地域資産としての建築とは」である。僕の考えたパネリストは建築史家藤岡洋保東京工業大学教授、構造の西澤英和関西大学教授(現)」そして兼松、お二人の了解を得た。進行役は和田と相談して曲田清維愛媛大学教授にお願いした。そして来場された甲岡町長の会場からのメッセ―ジに心を打たれることになる。

2階階段室
2階階段室
シェルの先端
シェルの先端
中庭から望む外観
中庭から望む外観
中庭から望む外観
中庭から望む外観

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