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建築ガイド
建築保存物語
建築保存物語(15)鬼北町庁舎(1958年愛媛県鬼北町) 

写真と文 兼松紘一郎

四国のまちから全国へ(2)

 「財源が逼迫しているなか新庁舎は建設せず『使えるものは使う』という観点から、現在の庁舎に耐震化と大規模改修を施したうえで活用する」。「使えるものは使う」。この誰にでもわかる言葉で明快に述べる町長の指針は、シンポジウム時、委員会設置時、そして4年を経た増築棟地鎮祭時でも全く変わらない。その信念に共鳴した柴田副町長が甲岡町長を支え、いわば二人三脚でこの課題に取り組んでいる。見学し感銘を受けた僕は、シンポの前年2009年12月25日、DOCOMOMOから藤岡教授の建築史的価値評価書を付してこの庁舎の「保存・活用に関する要望書」を副町長に提出した。町長がご自身の指針が間違っていないと確信されたのはこの要望書と、庁舎をつぶさに見た藤岡教授の論考、西澤教授(現)の保管されていた構造計算書と図面に眼を通した構造の安全性とそれに基づいた調査方法への進言だったのではないかと思う。後日この建築は「登録文化財」になった。

 まちの意向を受けた曲田教授と和田は、建築学会四国支部による「鬼北町庁舎再生検討委員会」を設置、2010年9月6日第1回委員会を開催した。委員会は建築関係者、鬼北町の社会福祉協議会など町の有力者、庁内の職員も含めた15人による構成で曲田教授を委員長に推挙し、和田は大切な裏方・事務局を引き受け僕も委員として参画した。この会議で感じるものがあった。庁舎完成時に中学の教員だった女性委員から、素晴らしい役場ができたというので生徒を連れて写生にいったという子供たちの笑顔が浮んでくるような挿話、庁舎の存在が皆の心に沁み込んだ。

 翌2011年度は委員会を鬼北町が設置、和田は委員に就任する。庁舎の常時微動調査など各種の調査を行い、12年度は庁舎職員による意見交換とし、その間改修事例を見る研修旅行を行う。秋には改修設計をレーモンド事務所に委託、委員会は建築関係者と職員による鬼北町庁舎設計監修委員会とし、庁舎の構造検討を始め、評定委員会に上程した。国からの助成金を確保、まず震災時の拠点となることを視野に入れた木造による増築棟の建設を決める。提案された集成材使用は委員会で拒否、地元で産出される木材による建築とする。本庁舎は増築棟完成後改修工事に取り組む。2013年12月住民への経過説明会を各地区で行った。

 特記しておきたいのは、「行政サービス向上プロジェクトチーム(PJ)」の庁内設置である。行政経験10年以上、庁舎改修後20年以上勤続を有する40歳以下の職員で構成、将来を見据えての検討を始めた。この4年間に渡る庁舎プロジェクトの過程を、四国のまちから全国に伝えたい。そこに「沢山の人」のいることを!

屋上(ガラスブロック)
屋上(ガラスブロック)
屋上(ペントハウスと煙突)
屋上(ペントハウスと煙突)
鬼北町庁舎外観 玄関
鬼北町庁舎外観 玄関
2階階段室
2階階段室
議場
議場

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