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建築ガイド
建築保存物語
建築保存物語(16)
東京女子大学東寮、旧体育館(1924年東京杉並区)

写真と文 兼松紘一郎

先達の築いてきた豊かな空間

 建築の保存に取り組むのは、その建築が建つ場所、内在する物語や設計した建築家の存在に好奇心が刺激され、その建築に魅せられるからだ。残し方の課題はあるとしても、残せたときはホッとし、うまくいかなかったときは黙するしかない。しかし無くなり時を経れば経るほど歯軋りしたくなる建築がある。東京女子大学(東女:トンジョ)善福寺キャンパス(建設時の呼称)にあったアントニン・レーモンドの設計した「旧体育館」である。

 レーモンドは、1919年(大正8 年)帝国ホテルの建設に取り組んでいたF・L・ライトの助手として来日したが、翌年にライトの元を離れ21年より東女善福寺キャンパス総合計画を策定、24年以降順次9棟の建築を建てた。この建築群は、日本のモダニズム建築を率いることになるレーモンド初期の、建築の師ライトとレーモンドの故郷チェコのキュビズムの影響の残る魅力に満ちた建築群である。1998年には7棟が国の登録有形文化財に登録されたが、何故か東寮と(旧)体育館はずされており、2006年の「学報」のキャンパス整備計画で2棟の解体が記された。その報道に不審を持ったOG(卒業生)が集まって藤原房子を代表とした「卒業生有志の会」が発足、この会は後の「レ会」と称される「東京女子大学レーモンド建築 東寮・体育館を活かす会」(通称東女レーモンドの会)に発展する。

 藤原は建築史家・藤岡洋保教授(東京工業大学)に電話をして東寮を案内した。この建築をつぶさに見て魅せられた藤岡は「歴史的評価書」を2006年7月大学に提出、これがOGによる眼に見える保存活動の発端となった。

 しかし藤原の案内したのは東寮のみ。体育館(旧体)にはまだ目が向かなかったようだ。東女は全寮制ではなかったが、学生時代を寮で過ごした藤原には、ご自身の人生の原点がこの寮生活にあったとの深い想いがあったのだろう。しかしOGとの連携を深めていくうちに(時を経て)旧体の魅力にはまることになる。2階の外部通路にある花鉢に、学生と一緒に毎年花を生けるOGがいる。旧体で東大生とダンスをやって伴侶を見つけたOGがいる。JIA(日本建築家協会)やDOCOMOMOからの要望書提出に関わった僕も旧体にはまった一人。レ会が発行した「喪われたレーモンド建築」(工作舎刊)に一文を寄稿させてもらったそのタイトルは「不条理と闘う考」。そのなかの一言「日本で一番美しいキャンパス・・だった」。(文中敬称略)

東寮外観
東寮外観
談話室
談話室
着工時を誇る礎
着工時を誇る礎
暖炉
暖炉

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