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第100回 JIAアーバントリップ

報 告REPORT

第100回アーバントリップ レポート

2024年4月16日、第100回アーバントリップ「ふたつの建物の物語―名作誕生の過程」と題し、学士会館とパレスサイドビルディングの見学会が開催された。

  
                 撮影:大島碧                       撮影:大島碧

前半は学士会館で、東京工業大学名誉教授の藤岡洋保先生にご案内いただきながら、建設当時の状況やディテールなどにも及ぶ詳細な解説とともに、旧館を中心に見学を行った。端部に厚みをもたせ、力強く堂々として、また、所々ユーモアの含まれた高橋貞太郎らしい意匠のエッセンスが随所に感じられ、特に1階旧談話室や正面玄関は時が経った今でも色あせない魅力が感じられた。また、新館の藤岡保の端正な意匠とのコントラスト、増築時の新館と旧館との調和のさせ方など、現代の問題意識にも通ずることも多く大変興味深かった。
その後、藤岡先生によるレクチャーが行われた。岡田信一郎の初期案から、震災後コンペに至るまでの経緯を伺いつつ、建築家・高橋貞太郎の人物像まで浮かび上がってきた。
印象的だったのは、「高橋貞太郎は人を生かすのがうまく、『高橋貞太郎』というのは個人の名前ではなくて、いわば団体の集合名詞である」、という藤岡先生の言葉である。背後にあった構造を中心とした実務部分での佐野利器の貢献についても知ることができた。クラブ建築というあまり馴染みのない建築類型ではあったが、この建築にかかわった様々な人物像から、意匠にこめられた思いが理解できた。
竣工から間もなく100年を迎えようとしている今、この建築がこれから様々に手を入れられ生かされていくのだと想像するが、その中で本当に大切にして残していかなければならないものは何なのか、100年前の設計者に共感することができる貴重な機会となった。

 
                            撮影:大島碧                         撮影:大島碧

後半はパレスサイドビルに移動し、小倉善明氏、亀井忠夫氏にご案内いただきながら2班に分かれて見学を行った。安田アトリエも訪問することができ、フルサイズの開口部と庇のルーバーの関係性がよく分かった。一部吹抜けをつくり模型置き場にするなど、楽しそうに使いこなされていた。地下印刷室や巨大な機械室の迫力には圧倒された。
小倉氏、亀井氏、安田氏による座談会では、当時の様子を詳細に伺うことができた。時間的・予算的な制約に追われながらも、より良いものをつくろうという当時のチームのエネルギーが伝わってきて大変ワクワクした。
亀井氏の「いろいろなところがゆったりしていて、冗長性があるところが長持ちさせているのではないか」という言葉のとおり、全体として、内部は明るくゆったりとした構成で、想像以上の居住性の高さがあると改めて感じた。
円筒形のコアと美しいプロポーションの直方体、雨樋の連なるファサードは造形としての完成度が高く、一見他を寄せ付けないほどの雰囲気を漂わせているが、周囲や内部を歩きまわってみるとそんなことはなく、おおらかな「部分」が全体を巣のようにまとめている。高速道路や皇居など、巨大な都市スケールに呼応する全体構成・グランドレベルで近づいて眺めたときのきめ細やかな凹凸・心地よい余白や隙間を残した内部と、スケールに応じた肌理細やかな操作が若い設計者たちの等身大の感覚で行われていることが、色あせない魅力になっているのではないか。

 
                     撮影:大島碧             撮影:大島碧

ふたつの建築の見学会を通して、意匠的なすばらしさはもちろんのこと、建築家たちのパーソナリティにも踏み込むことができた大変楽しい時間となった。

大島碧
風景研究所

 

概 要OUTLINE

定員を超えた為、申込みを締め切りました。
たくさんのお申込み、ありがとうございました。

第100回 JIAアーバントリップ
■タイトル
「ふたつの建物の物語―名作誕生の過程―」

■見学主旨
学士会館は1928年竣工・築96年、パレスサイドビルは1966年竣工・築58年を迎えています。「これまで100年、これから100年」との声もある学士会館は、国の有形登録文化財で、ご存じの通り、再開発計画の中で保存再利用される予定です。(旧館のみ)また、パレスサイドビルは、DOCOMOMO「日本の近代建築20選」に選ばれ、1990年のリフレッシュ計画その他をへてさらに歩を前に向けています。千変万化、変化の著しい社会動向の中、なぜ、このふたつの建物は生命の灯を焚き続けているのか。人々に親しまれ、愛され、利用されつづける理由は何なのか。建築史家、東京工業大学名誉教授・藤岡洋保さん、元日建設計常務取締役・小倉善明さん、日建設計会長・亀井忠夫さん、東京工業大学教授・安田幸一さんをお迎えし、設計当時の状況、境遇などをたどりながら、どのようにして優れた建築に仕上げていったのか、そして、設計者、高橋貞太郎、林昌二、それぞれの建築思想や哲学、信念、作品に込められた意図など、建物の見学とレクチャー、座談会を通して、名作誕生の過程に迫っていきたいと思います。

■見学概要
・現地集合、現地解散、徒歩移動による建物見学および講演会の2本立て
詳細情報

■開催日 2024年4月15日(月)
時間 8:30集合、17:30解散予定
9:00~12:30 学士会館 見学およびレクチャー
12:30~13:45 各自昼食
13:45~17:30 パレスサイドビルディング 見学および座談会

■会場

1.学士会館

撮影:藤岡洋保

2.パレスサイドビルディング

撮影:篠澤建築写真事務所

■注意事項
・見学中は、委員および案内者の指示に従うようお願いいたします。
・体調のすぐれない方は参加をご遠慮ください。
・参加当日、体温を検温させていただく場合があります。
・写真、動画などの撮影については、禁止箇所や禁止事項などがあります。見学時の指示の厳守をお願いいたします。
・WEB、SNS等への掲載、投稿などは、上記に十分配慮し、節度と良識をもって行っていただくようお願い申し上げます。
<キャンセル料について>
・4月10日以降にキャンセルされた場合、キャンセル料として100%の参加費を申し受けます。十分ご注意願います。(キャンセルのご連絡は、以下の問合せ先までEメールにてお願いいたします。)

・個人情報保護法の施行に当たり、日本建築家協会(JIA)は法律に則って、個人情報を保護します。
・個人情報を利用目的以外に使用しません。
・参加者の個人情報は委託者を除く第三者に提供しません。
・参加者名簿(お名前・所属先・役職・住所=区、市まで)は協賛企業各社に提供、当委員会と共有いたします。
・見学の模様はyoutubeなどに、記録として公開する予定です。やむなくお顔、お姿などが写る場合があります。あらかじめご了承をお願いいたします。

詳細情報DETAIL

開催日
2024年4月15日(月)
時 間
時間 8:30集合、17:30解散予定
9:00~12:30 学士会館 見学およびレクチャー
12:30~13:45 各自昼食
13:45~17:30 パレスサイドビルディング 見学および座談会
会 場

1.学士会館
所在地 :東京都千代田区神田錦町3-28
竣工年 :1928年(旧館)、1937年(新館)
主要用途:集会場、食堂、娯楽室、宿泊室、ほか
建築主 :一般社団法人 学士会
設計 :高橋貞太郎(旧館)、藤村朗(新館)
施工 :戸田建設(旧館)、錢高組(新館)

2.パレスサイドビルディング
所在地 :東京都千代田区一ツ橋1-1-1
竣工年 :1966年
主要用途:事務所、商業、印刷工場
建築主 :株式会社 パレスサイドビルディング
設計 :日建設計 林昌二チーム
施工 :建築共同企業体 大林組・竹中工務店 

 

交通案内

集合 学士会館
・都営三田線/都営新宿線/東京メトロ半蔵門線 「神保町」駅下車  A9出口から徒歩1分
・東京メトロ東西線「竹橋」駅下車 3a出口から徒歩5分
・JR中央線/総武線「お茶の水」駅下車 御茶ノ水橋口から徒歩15分

午後再集合/パレスサイドビルディング 東8階 日建設計ロビー
・住所/東京都千代田区一ツ橋1-1-1
・東京メトロ東西線「竹橋」駅直結(1b出口脇)
・東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄新宿線、三田線「神保町」駅A8出口より5分

講 師
午前 
藤岡洋保氏(東京工業大学名誉教授)
午後 
小倉善明氏(元日建設計常務取締役、元JIA会長、Studio-O主宰)
亀井忠夫氏(日建設計会長)
安田幸一氏(東京工業大学教授、安田アトリエ主宰)
参加対象者
会員・賛助会員・一般・学生
参加費
2,000円(税込)(資料代、イヤフォンガイド、保険料、その他諸費用の一部を含む)
定 員
50名(原則先着順、募集定員に達し次第締め切り)
CPD
6単位(申請中)
問合せ先
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部事務局(担当:中山)
urbantrip@jia.or.jp
申込方法

参加希望の方は、下記Google フォームよりお申込み願います。
申込フォーム
応募締め切り:定員を超えた為、申込みをしていただいてもキャンセル待ちとなります。ご容赦ください。
参加決定者の方には、実施1週間前くらいに改めて、決定のお知らせと集合場所等の詳細資料をお送りします。なお、参加の権利は他者への譲渡はできません。
*4月10日以降にキャンセルされた場合、キャンセル料として100%の参加費を申し受けます。十分ご注意願います。(キャンセルのご連絡は、問合せ先までEメールにてお願いいたします。)

主 催
公益社団法人 日本建築家協会(JIA)関東甲信越支部アーバントリップ実行委員会
共 催
旭ビルウォール(株)、(株)イケガミ、三協立山(株)、(株)東京工営、(株)ユニオン
後 援
協力:新国際通信社