第94回JIAアーバントリップ オンライン

「父の家」建築家による親のための住まい

「父はふと、『最後くらい、息子の設計した家に住みたい』と呟いた。そのひと言に僕は突き動かされ、実家を建て直し、そこで父と一緒に暮す決断をしたのである。30年以上、離れて暮らしていた（美術監督の）父と（建築家の住まいとして）単に設計する建物のこと以上に、自分のこと、家を建てることの意味など、本当に濃密な時間でした。
でもそこに、建築をつくることの原点があるようにも思いました。産業に完全に組み込まれて商品となってしまった住宅を、もう一度人間のために手繰り寄せるようなプロセスだとも思いました。 (千葉学）」
近隣とのお付き合いを大切にした外と自然に繋がる床仕上、以前よりも近隣に日陰をもたらせない高さ、快適な室内の空調環境、間接照明を有する壁面を飾る本棚にはお二人の思い出の品々が歴史のように飾られています。
その多くは父上が学さんのために整理し、保管していたスケッチブックや書道セット、幼少期からの文集やアルバムなど、学さんご自身も忘れかけていた記憶を読みがえさせられる空間となりました。又、千葉学さんのコレクションである自転車やその部品なども重要なインテリアとなっています。「何よりこの住まいが閉じたもの(住宅)ではなく、町に開いていく、町に返していく、そんな想いがつまった未来を再認識する『父の家』（千葉学）」から生配信します。
新しい家の設計過程での親子の対話、父と息子の新しい暮らしが始まってからの気づき・お考えなどを、映画監督であり自身の父上も建築家である石山友美さんをお迎えしての見学会となります。本企画にあたり、石山友美さんによる「父の家」映像作品のご制作が叶い、撮りおろし初公開！3人のクリエーターによるクロストークも事前収録し、「家族の変化」「老い」など、誰もが直面する概念にも向き合い、単なる建築作品の見学会にとどまらない、オンライン開催ならではの見学会をお届けします。　　　　(企画・コーディネーター：中村雅子 蔵楽友美)

外観

内観
撮影：吉田 誠