「住まい方」に関わる問題は集合住宅においてドミナントにならざるを得ない。なぜならそうしたソフトプログラムを説くことは、建築に社会性を付与するということを意味しているからだ。この方法により示されるモデルは社会的状況を映すことに適しており「生活の質」を言い表してきた。しかし、空間や光やスケールといった「ハードの質」はどうだろうか?
本研究は集合住宅のハードのあり方を問い直す事で、都市に集まって住まう意味を「統一的合理性」以外の形で示すことを目的する。
まず、40箇所の集合して住まっている場所の収集・分析をおこなう。次に各事例の「分節の形式」に注目し空間言語の類型化を行う。これを踏まえ横浜市西区老松町を対象敷地として集合住宅+公共施設+共有施設の計画を行う。構成の要点として「分節するフレーム」が周辺環境を写像しつつそこから分節された場を形成することで、“ウチ(共同体を表象できる場)”と“ソト(都市と相対する場)を作り出す。
集住体において顕在化すべき対象は“個人”ではなく“都市に散在する共同体”である。「都市性」を異質なるものの重合や同時混在と考えるとすると、フレームがそれを居住空間に作り出すことで多様な共同体を顕在化し得る集住体となる。そして、それを通して行われる共同体間の応答が、その形成基盤である個の生活の質を変化させてゆく。このことが、現代の都市における集まって住まう意味と考える。
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