地方都市には、城郭や水堀等の史跡を中心として形成された市街地が多く見られる。これらは本来、地域に歴史的、空間的アイデンティティを与える重要な環境要素といえるが、多くの場合、空間的コンセプトや建築プログラムの曖昧な公園として整備されおり、このことが地方都市の住環境を貧しいものとする一因となっていると考えられる。近年、都市のスプロール化により郊外に住み替える人々が増加するなかで、地域に固有の環境要素を見直し、それらと建築との空間構成上、プログラム上の関係を検討することが、中心市街地に住環境を回復する上で重要であると思われる。こうした認識のもと、本計画では、城壁、堀割等の史跡が現存し、かつ城跡周辺部が適度に市街化された山形県新庄市を敷地とし、既存の環境要素を保存・活用することを通して、活気に満ちた住環境をもつ城郭都市の再構成を提案する。
新庄市中心部の城跡やオープンスペースは、公園や広場、グラウンドなどの使用用途の限定された外部空間として整備されており、水堀や土塁といった史跡に隣接するこの地域の独自性が充分に生かされていない。そこで、集合住宅と植栽等が一体となったランドスケープを城跡周辺部に計画することにより、城跡と周辺環境を緊密に関係づけるまちの中心部における住環境のリノベーションを提案する。
これは、地方都市における建物と緑地等により構成される地域環境の新たな可能性を示すものと考える。
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