■はじめに
物事は誕生するときより消失するときのほうが意味深い」
その地域に歴史を刻み、町の雰囲気をかたちづくっていた表参道の同潤会アパートメントがなくなることや、一瞬にして崩れ去ってしまったニューヨークワールドトレードセンタービルの跡地であるグラウンド・ゼロからそれが理解できる。ものがなくなるときというのはそこに積み重ねられた歴史による時間性、その地域固有の場所性を強く浮かび上がらせる。
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■建築モデル
本計画では、10年でなくなる建物を設計することで、その敷地、地域の過去から現在、そして竣工後の10年、さらには建物の消失後の未来をもデザインの射程に組み込み、ものがなくなることによってうまれる数値化することのできない感情や思考が、表面から躯体、またその周辺環境にまで拡大したある種のモニュメンタリズムを備える建物を構築することである。
■プログラム
ものがなくなることを機能的なことやプログラムに対する建物の構成を見出す手立てとするのではなく、ある物質の多様な相を浮かび上がらせる物理的な現象として扱う。
おわりに
ものがなくなることを通して、建物をひとつの物質として捉えるという、ある種の合理性を超えた建物の在り方とは、巨大なオブジェクトである建築と人とが新しい関係を築くための問いかけであると考える。
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