近代建築以降、建築は位相幾何学的に閉曲面である直方体をベースとした、面の強調による空間によって構成されることで、完結性や閉鎖性を獲得し、それによって人の活動を限定・収束させていると考えられる。
本修士設計では、開曲面における「表裏性」から、表裏が常に反転して知覚される性質を「表裏反転性」と定義し、それらを空間構成に用いることによって、明確な輪郭や境界の認識が難しく、人間の行動が限定・収束されない空間を「表裏反転境界体」として提案した。
表裏反転境界体は、空間化した境界を折板によって構成し、折板の平面構成と断面操作を要因として、表裏反転性を獲得するものである。
また、この表裏反転境界体の有用性を、図書館機能を持ったUrban-Living-Centerの設計において検証した。開架室、学習・閲覧室、ギャラリーを、明確な機能を持たないリビングルームへと、表裏反転境界によって繋いだ結果、空間単位に限定されない高い回遊性が獲得された。また、異なるプログラムにより分節され合う領域が、境界空間を中心にうまれるインタラクティブな場によって繋がれ、空間の完結性や閉鎖性が排除されることから、多様な活動に対応した空間を示すことができ、表裏反転境界が空間を分節しながら曖昧に繋げることに有効であることが確認できた。
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