これまでの火葬場は近代化の流れの中、終末処理施設として扱われ人々から火葬を行う場とその行為に対して嫌悪感と偏見をもたれてきたが、現在多くの火葬場でこれまでのイメージを払拭すべく精神的な儀式の場として建て替えが進められている。しかしながら大都市における火葬場は都市の終末処理施設としての色合いがいまだ強く必要な機能だけを詰め込んだ建物となっている。一方、日本の首都であり、最大の人口を抱える東京23区の火葬場は全国的に見ても10万人あたりの火葬炉が1.24基と少なく、また公営斎場2ヶ所、民間斎場7ヶ所と極めて高い民間依存率であるため、公営の火葬場の建設が必要である。そこで、本計画では人口の増加が目立つ東京港周辺と東京中心部を対象エリアとし、有明貯木場跡埋立地北端に水辺環境を取り入れた都営葬祭場として計画・設計するものである。さらに需要が高まっている海洋散骨に対応する施設を取り入れるものとする。
設計コンセプト
死者を送り出す儀式の場であることを象徴すべく、各部門を切り離しシーンの転換を明確にする。部門ごとに円弧の外部通路で囲い平面的に奥行きをまし日常空間との距離をつくり出す。また円弧状の外部通路は、周囲の高い建物からの視線をさえぎり、会葬者には臨海部の大きく開けた空だけを視界に入れることが出来る。また部門ごとの特性に合わせ、水辺と関わりをつくるり、水辺とのかかわりに向かない部門では内側に水面をつくり葬送空間の演出を図る。
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