1.研究目的
無数の再開発計画が推進されている東京都心部においても、古くからの町並みが残り、道路や路地など、公共空間に活気溢れるコミュニティが形成されている町が現存している。このような町を「生活する町」と呼ぶことにし、そこにおけるコミュニティと町の構成要素との関係は、都市をデザインするために重要であると考えられる。
本計画の目的は、コミュニティと町の構造を生かしながらその「生活する町」が今後どのように成長すべきかを提案することである。街区を統合し更地としてからはじめる再開発ではなく、既存の町に息衝く歴史的背景や住民生活の根幹となる特性を生かした上で、いかに更新していくかを考える。
2.研究方法
敷地のコンテクスト、コミュニティ等を知りその上で既存の町に対する提案をする。
フィールドワークと関連文献の調査を行い、「終の住処を守る会」(住民不在の再開発に反対し、住民主体のまちづくりをめざす住民組織)に参加。半年以上の住民活動を実際に体験した。
3.計画概要
「活気溢れる町」とは、人口が多い町ではなく外部のオープンスペースでも人々の活動が見える町であり、それには外部空間と内部空間の繋がりやすさが欠かせないものである。
外部空間と内部空間が近いというのは、高層建築ではなく現在の町のような低中層の町であると考える。また、現在の町の構造を利用し街路空間にヒエラルキーを与え、既存の路地を利用した歩行者のネットワークをつくりだすことにより歩行者と車の分離を行う。そして、より内部空間と外部空間を近付けるために1ブロックにひとつ『町庭』を設ける。
この様に挿入した外部空間を充実させることによって、その周辺の外部空間もより豊かなものへとなる。また、そのことによって建物の側でも外部空間が染み込んでいくような町へしていく。
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