近年、世界各地において深刻な災害やテロリズムが頻繁に発生し、多くの人命が失われている。それらの事件から建築は「様々な脅威から人命を守るもの」という起源を持ちながら、時として災害に加担し、人命を奪うものであることが浮き彫りとなっている。
価値観が多様複雑化した現在、様々なデザインコードが建築を取り巻いているが、こうした状況の中最も早急に必要とされるものは、「緊急事態に備えるデザイン」であると考える。
本プロジェクトではこれを「エマージェンシー・デザイン」と呼称し、特に安全確保と建築計画が密接な関係を持つ超高層建築について、安全面から見た現状の仕様を把握、考察することでその指針を得る。その上でエマージェンシー・デザインを用いた超高層建築計画の一例を示し、今後災害やテロリズムに対抗する建築設計の有効な手法として提案する。
これまで設計の障害と捉えられる傾向にあった緊急事態対策を、建築表現として積極的に用いることの出来るポジティヴなデザインコードへと転換し、一般性を獲得させることで、防災・避難への意識を高めつつ、今後の新たな建築表現の模索を活性化させることを目的とする。
|