都市景観に見られる河川や土木構築物(道路、鉄道、橋梁など)は、周辺環境とスケールの異なる無機質な素材と構成で周囲との関係を分断し、特異な景観を形成している。そして都市には、高速道路や鉄道、河川に挟まれることで、周辺要素と空間的・用途的に切り離された1街区が、浮島のように存在する場所(浮島空間)が多数生じている。こうした浮島空間は、建築と土木構築物によってできる都市景観を形成する上で重要な場所の一つと考えられる。
本研究は、浮島空間と土木構築物の関係を調査・分析する。それらの検討を踏まえ、浮島空間や土木構築物に建築とランドスケープを用いた新たな関係を挿入することで、互いの特性が一体化した都市景観を再構成することを目指す。
千代田区飯田橋は、土手状の鉄道と神田川上部に架かる高速道路に挟まれることで、周辺と分断された浮島空間である。本計画は、浮島空間、隣接する土木構築物のJR中央線地下と首都高速道路下に、浮島空間と都市を繋ぐ手法として、『積む』・『削る』・『渡す』といった建築操作を行う3つのプロジェクトを提案する。これによって、例えば、周辺と緩やかな繋がりを持つ公園や、土木構築物をバッファゾーンとした現存の工場などを有効に配置できる。外部では、車窓から建築内の行為や周辺の東京ドームの風景などが新たにみえる。
このことから本計画は、建築と土木構築物の領域が一体とした浮島空間の領域を越えた都市に対する新しい有り様を与える建築の提案と考える。 |