作品概要
2003年市ヶ谷にある防衛庁の一角に建設された「自衛隊殉職者慰霊碑地区」は、自衛隊発足以来の公務で亡くなった1726柱の自衛隊員のための施設という名目である。だが、その建設のタイミングからするとイラク派兵によって想定される殉職者のための慰霊碑といえるだろう。上記のメモリアルゾーンと同じ意味合いを持つ「無宗教の国立追悼施設」を建設するということは、日本のこれから先の未来における戦争参加への意志の顕われである。
「無宗教の国立追悼施設」は既に存在している。それは「無名戦没者墓苑」という名前のものであるが、性格としては似たようなものであろう。私は、この施設に着目し、どうにかして復権を果たすような建築的操作を行なおうと考えていた。しかし、ここにも靖国の論理が及んでいる。この施設の中心を通る軸線の延長線上を辿ってみると、靖国神社の拝殿へと帰着するのであった。この軸線により、無宗教の追悼施設と靖国神社との堅固な結びつきが読み取れるだろう。
多くの欺瞞の中で、戦争への道を歩き続ける現在の日本にとって必要な施設とは一体何か。それは過去の日本によって残された呪縛、すなわち靖国/戦没者墓苑の強固な軸線を解体する計画であり、歴史研究所、戦争資料館を含めた歴史博物館、国民的な思考の場などを兼ね備えた施設である。
プロファイル
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