鷹箸 譲
所 属
芝浦工業大学大学院工学研究科建設工学専攻
研究室
堀越英嗣研究室
作品概要
目的は、ベットタウンの風景の再構築である。
私は、埼玉県浦和市に育った。見沼の田圃に程近いこの地は、かつていくつもの用水路が土を潤す農作地だった。人々は、農耕を生業とし、神を祀る社で豊作を祈り、林を纏う居に住んだ。そこには、人々がこの土地とつながりながら、営み、暮らす、原風景があった。 戦後経済発展の中で、東京は郊外へと拡大し、いつしかそこは、“ベットタウン”と呼ばれるようになった。東京で働く人々のための“ベット”とされたこの街は、日々の暮らしよりも経済性と利便性を優先し、乱開発された。結果、無計画に住宅が密集し、歩者分離されない車のための道が張り巡らされ、豊かな住環境とはいえない現風景が作られた。それでもその風景の中で育った私にとって、散在する林や畑は絶好の遊び場だったし、数少ない自然体験の場だった。 日本は人口減少の時代を迎えつつある。それにともなって、社会や都市の構造は拡大から縮小へ変化を求められるはずである。しかし、今もなお人口増加の過程にある東京郊外では、従来型の乱開発が続いている。もともとわずかであった林や畑は消滅の危機にある。このままでは、近い将来、近自然の乏しい住宅地の中に大量の空き家が発生していくことになる。
本計画は、拡大の時代に生まれた不遇の住宅地ベットタウンの中に、人間が豊かに暮らす空間を見いだし、それを作り出していく減少の風景を描こうというものである。
プロファイル
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