1985年 北海道生まれ
2008年 工学院大学建築都市デザイン学科卒業
2010年 工学院大学大学院修士課程修了
JIA全国卒業設計コンクール 銅賞
工学院大学修士論文学内審査会 最優秀賞
トウキョウ建築コレクション 小野田賞
「数寄」屋/もしくは「檻」
- 村口 勇太
- 工学院大学大学院 工学研究科建築学専攻
- 澤岡研究室
空間に関する所感
この建築は、空間認識についての一つの試みであると同時に、 私の考えを間接的に説明するひとつの弁明でもある。 というのも、正直まだ私の中には「確信」なんてものはなく 自分のなかに抱いている「疑心」さえこの弁明には多分に 含まれている。けれど、私は大声で弁明する。
まず「数寄」の特殊性は一つの可能性を持っていると私は思う。 好き、透き、隙、空き、数奇、スキ…etc 様々なニュアンスを 含む日本的なコトバが、この小さくて巨大な部屋のキーワードになっている。 イタリアと京都で体験した私的な数寄の芸術に、私は大変感動した。 本研究はその経験をキッカケとする、と同時にその「体験」の具現化が目的にもなっている。
寸法は2000×1220×2070mm。「空間」を「機能」という人間の行為からの「必要性」とは違う観点から考える。内面からくる「必要性」から考えたい。 Scarpaが、高山右近が、実現させた空間のように 断片化によりこの小さな部屋は物性を獲得する 配置ではなく陳列に、構成ではなく包囲へ このモノは「存在」することによって、意味と装飾性を帯びていく 建築面積2.44㎡のこの巨大な空間で、建築が単なる機械ではなく 人間の内面に踏み込みその精神を左右するものである事を証明する。
私はこの「囲われた空間」を『檻』と呼ぶ。
檻か、大人の秘密基地か。
今こそ檻が必要なのだ。