酪農家の家 - さくらんぼ畑と最上川と六畳倉庫小屋 -
- 氏名
- 小松 拓郎
- 所属
- 工学院大学大学院 工学研究科 建築学専攻
- 研究室
- 澤岡清秀研究室
作品概要
学生最後の修士設計でどうしても設計したいものがあった。
いや、今思えば、しなければならないことだったのかもしれない。
それは私の家族のためにひとつの家をつくることである。
対象とするのは、山形の実家の庭に捨てられたように存在していた、築100年の籾入れ小屋(倉庫)。そこではかつて持ち込まれた箪笥、火鉢、漆器入れ、屏風入れ、本、服など計25個の記憶の断片が発掘された。現在では結婚時にタンスを持ち込み、利用する文化もなくなり、記憶が蓄積することもなく、建物が徐々に壊れ始めている状況である。
もし、この建物が、私の家族が過去という記憶を失ってしまったら心の拠り所はなくなってしまうのではないか。私の家族のために、絶対的な心の拠り所となるような、ひとつの記憶の器を計画する必要がある。それらの建物と発掘物を再構築すべく、我々の原風景でもある最上川沿いの、さくらんぼ畑の側で展開する。
この倉庫には数々の記憶と行為の断片が浮遊している。それらを選び、行為を行うとき、それと同時に『空間』が現出してくる。写真のような記憶への定着ではなく、ある期間滞在する中で知覚・認識したことを空間的に捉え、記憶として堆積していく。
この建築は使い手が能動的に『空間』を獲得・所有していくプロセスそのものであり、光と闇が織りなす変幻自在の六畳倉庫である。
1986年 | 山形県生まれ |
2005年 | 山形県立山形中央高等学校 卒業 |
2009年 | 工学院大学 建築都市デザイン学科 卒業 |
2011年 | 工学院大学大学院 建築学専攻 修了 |
現在 - | (株)日建設計 勤務 |
受賞歴 | |
2009年 | 工学院大学卒業設計審査会 第二位 |
2009年 | JIA東京都学生卒業設計コンクール2009 東 理恵 賞 |
2009年 | 新建築住宅設計競技2009 選外佳作 入賞 |
2011年 | 工学院大学修士制作審査会 内田 祥哉 賞 |
2011年 | トウキョウ建築コレクション 全国修士設計展 手塚 貴晴 賞 |