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自己切断の時代における回帰のメルクマール -地理多様性の保存と身体と世界の再物質化をもたらすもの-

氏名
甲津 多聞
所属
武蔵野美術大学
造形研究科 デザイン専攻 建築コース
研究室
高橋スタジオ
作品概要

 フランスの思想家P・ヴィリリオは、現代という速度世界の革新のもとで地理多様性の喪失を訴え、危惧の念を示す。物質世界はスムーズな運動を生産する機能平面上の世界に置き換えられ、それにより我々の身体は浮遊を象徴する亡霊かのように都市を滑ってゆく。我々は、非物質的で幽霊的な現前のために物質世界が凋落する瞬間を無視しえないであろう。ここに固有の身体の喪失をみるヴィリリオは、触覚の回復、歩行、アルピニズムの感触を再び見出す必要性に駆られる。そして、それらの回復は身体と世界の再物質化であるとしている。
 ヴィリリオは第二次世界大戦の際に構築され打ち捨てられたままとなっていたコンクリート塊のブンカーに遭遇する。そして、その塊との一瞬の対峙のうちに、内的にも外的にも押しつぶされそうになる感覚を感じとったという。その空間は身体の現実的な可動のためにはあまりにも小さく、建物全体がずっしりと身体に覆い被さる様な重さを与えていた。それは、原型的建築特有の圧迫感を感じさせるものであり、人間のフォルムを纏うような形態は身体の形象を示していた。また、ブンカーに付けられた女性名は避難場所としての胎内回帰願望的欲求を示唆させるものであった。
 ここに、不在となった身体の回復を主題に掲げ、考古学的な視座により分析されたブンカー研究を援用することで物質への回帰の兆しを見出し、地理多様性の保存を目的とした風景保全施設を提案する。

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プロフィール

  • 略歴
    2018
    武蔵野美術大学デザイン専攻建築コース 修了