作品詳細Gallery
「土地の断片」をつづる -フクシマの故郷を題材として-
- 氏名
- 小坂 諭美
- 所属
- 早稲田大学大学院
創造理工学研究科 建築学専攻 - 研究室
- 古谷誠章研究室
- 作品概要
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本計画は、福島原子力発電所事故以前にフクシマに住んでおり、深い関わりがあったが、事故後の境遇の異なる3家族のための計画である。私の故郷はフクシマであることから、本計画は、福島県出身者の立場としての建築的提案であり、私がフクシマで実際に見てきたものの記録である。
フクシマでの「土地の断片」の採集調査をもとに形態例を作成し、事故後の個人の生活を肯定する装置と、記憶を宿す「拠り所としての花」によるつながりを計画する。「土地の断片」とは、避難地に引き継ぐことのできなかったフクシマの記憶や縁を指す。計画は、祖父の思いを引き継ぐ「花のためのドウグ群」、母やフクシマの記憶を受け継ぎ展開する「記憶のためのイエ」、新しい土地との関わり方を模索する「街に根付くマド」。それぞれが、記憶を媒介する可能性を持つ花に付随する小さな建築によって構成される。
花はとても小さいけれど、年月を超え、場所を超えて、私たちに故人や故郷の記憶を思い起こさせる可能性を持つ。物理的にはもう土地に立ち入ることができないフクシマであるからこそ、「想起する」という手法が意味を持つ。本計画は、個人にとっての復興のあり方を提案するとともに、物理的な土地を持たない、新たな共同体のあり方の提案。何かを突然に失ったとき、このほんの小さな、常に記憶を宿す花をまとった建築が、個人の復興にとって、大きな拠り所となることを願う。
プロフィール
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略歴
- 1993年
- 福島県生まれ
- 2016年
- 早稲田大学 創造理工学部 建築学科 卒業
- 2018年
- 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻 修了