東京都墨田区京島の商店街にて、お茶販売店を営んできた鉄骨3階建ての店舗併用住宅をアーティストのためのシェアハウスに転用する実施プロジェクトである。木造住宅密集地域である京島エリアでは1980年頃から続く防災まちづくりの動きと並行する形で、2000年頃から長屋や町工場、店舗併用住宅等の低層建築ストックをアート活動と絡めて活用する取り組みが展開されてきた。アートイベントの実行委員会や不動産管理会社を組織する同エリア在住のクライアントらにより近年この動きは加速化しており、本作品も一連の活動の延長線上にある。こうした低層建築群を本研究では「下町ストック」と定義し、実施設計提案を通じて都市リソースの利活用モデルを提示することを目指した。本提案の最大の特徴は、屋上テラスに設けた「風呂小屋」とその周囲の空間を、立体的かつ多目的に活用できるよう工夫した点にある。計画の背景を調査するためクライアントらの元で参与観察を行う中で「下町ストック」を観察し、これらの屋上やベランダに付属する自然発生的に生まれた小さな空間に魅力を見出した。こうした空間の用途は本来プライベート性の高いものであったが、設計では「風呂小屋」と屋上空間を多様な使われ方を想定した従来よりも公共性の高い場所へと読み替える提案を行うことで、住人の営みが街中にあふれ出すような 賑わいの 場を作ることを目指した。