静岡県南伊豆町は自然、地形と密接に関わり、生業を立て活発な地域社会を維持し,独自の発展をしてきた. そこでかつての温泉や、石切場の空間を活かし身体的な空間体験をするスパホテルの計画である.衰退してしまった地域の固有資源を再構成することで,人々がこの町に集まり、地域再活性化を目指す. 計画の前提となる基礎情報は、文献文献とジオパークガイドのガイダンスに基づく実地調査を主とする.自分の足で地形や環境を体感し場所の経験を地形図に重ねて記述することで、実空間の特徴を掴み自身の感覚を深めとする.「経験マップ」を描き情報を蓄積する.現地の温泉に数次に渡り投入し、また長く滞在して画案をその場で立案するなど計画と身体の連続性を高める.計画では石を切り出した山そのものに注目し，山の南側斜面と山の内部に，対照的な二つの空間を計画する。山の斜面には，等高線に合わせるように雁木のような半外部の空間を計画する。町の風景や自然の木々，剥き出しになった岩肌などの環境を取り込んだ，柔らかく，町に広がる空間である。ここには足湯や図書館、レストランがある。一方で, 山の内部は，石切場の空間のように，強く硬く象徴的な，場所の固有の環境に包まれる，身体的なスパ空間である。また地熱エネルギーは、計画全体のエネルギー計画の基礎となる.