香港では社会的な背景からお手伝いさん文化が発達している。多くの家庭では日曜日を家族だけで過ごす日としており、お手伝いさんは休日、一日の大半を屋外で過ごす。本研究では香港の経済発展に大いに貢献しているお手伝いさんの過ごし方を調査・考察し、彼女たちのこれからの過ごし場を提案することを目的とする。現地調査により、「お手伝いさんの空間の特性を見抜く視点」と「手操作」が合わさることで快適で豊かな場がつくられていることが得られたが、一方で高密度に集まることによる街への問題点も見つかった。そこで、高密度に集まるお手伝いさんの過ごし場を分散させ、新しい選択肢としての過ごし場を提案する。設計手法は三段階で計画した。第１に実測から得たお手伝いさんが無理なく過ごせるスケール感を基に空間ボリュームを設定する。次に、お手伝いさんが過ごし場を見つけやすい動線を計画しながら設定したボリュームを配置し、場の展開が可能な仕掛けをつくる。最後に平日と休日の使用目的に合わせて空間に対応するべく、手操作による可変性を取り入れる。
この提案により、お手伝いさんの過ごし場を改善することに加え、現状の問題点を解決しつつ住民や観光客を巻き込むことで、街が活気付き、新たな香港の風景を生み出ことにも繋がる。