醗酵を纏う

- ポーラスの日本的解釈による実験建築 -
氏名
天野稜
所属
芝浦工業大学大学院
理工学研究科 建築学専攻
研究室
建築ランドスケープ研究室(小塙研究室)
作品概要

本研究は、ポーラスの環境性能と微生物による自然発生的な生成プロセス「発酵」に可能性を見出し、ポーラスを用いた材料開発及びその材料を用いた設計研究である。日本人の長い歴史の中で培われてきた「日本的なもの」への転用に向けた新たな方法論として位置付け、工業的な予定調和ではなく、日本古来の自然素材に通ずる、より自然的で不確定要素を伴う生成プロセスを用いて「日本的なもの」への利用可能性を模索する。
身近なポーラスの生成方法「発酵」。この物質生産工程の場は、より自然的な方法であり、人間や生態系への親和性を示唆している。ここに自然素材を利用し、暮らしの中に微生物と深く関わりがあると考えられる日本民家との類似性を見出し、民家の要素、自然由来の材料からその特性を抽出した。呼吸する自然素材、土に還る建築材料の利用は、微生物の活動を通じて、自然環境全体への循環を齎す。ポーラスの特性と民家における微生物の働きから、現代における材料を素材や調合、発酵時間を変化させた実験を通じて探求する。
ポーラスを生成する段階的な実験を経て、10分の1スケールの最小限空間“茶室”の設計へと落とし込み、材料と空間への可能性を実証した。微生物の「発酵」によるポーラスは、「自然環境―建築―人」という途切れのない連続性を持ち、その生成プロセスを辿ることで、自然の本質、生命の体現を想起させ、「日本的なもの」としての風景を築いていく。

作品イメージ

Profile

略歴

1999年 埼玉県草加市生まれ

2022年 芝浦工業大学 建築学部 建築学科 卒業

2024年 芝浦工業大学大学院 理工学研究科 建築学専攻 修了