行方不明者の家
(Radioactive Ghost House)- 氏名
- 成定由香沙
- 所属
- 東京藝術大学大学院
美術研究科 建築専攻 - 研究室
- 建築設計第二研究室(中山英之研究室)
- 作品概要
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昨年福島第一原発の廃炉になった原子炉にある、使用済み燃料貯蔵プールに残るチェレンコフ光を見た。チェレンコフ光とは、水などの透明な媒体の中を高速で移動する電子によって作り出される光の衝撃波である。青白くぼんやりとしたその不気味な光は、我々の生活の中で灯される光の残像のようでもある。役目を終え、機能を失い、「繭」となって形骸化した原子炉の中にはそんな青い光が亡霊のように漂っているのである。『行方不明者の家』と題した7つの建築物は、マンハッタン計画において核施設軍として計画されたアメリカ、ハンフォード・サイトに残る原子炉を覆う「繭」を輪郭として引用し、内部に新たな建築を設計しながらスケールを変えながら都市の中に挿入することを想像する。「行方不明者の家=Radioactive Ghost House 」はそんな青い光が世界中へと彷徨った先の、光のための家である。光のための家、すなわち物語を投影する「劇場」として、もはや誰も入ることのできなくなった原子炉の中身を想像するのである。同時にこれは地球上のある領域を「核の都市」として作り替え、ある都市を壊滅させるに至った暴力的な歴史に対し、場所を問わず点在させるという都市的な規模の暴力性を持ち込むことによって対抗する。この「トラウマ」としての建築は埋め尽くすことは決してありえない〈歴史の空洞〉を継承する試みである。
Profile
略歴
1998年生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。主な展覧会に「Ground Zero」(京都芸術センター/京都/2023),「できない(かもしれない)わたし」(The 5th Floor, VOU/東京,京都/2022)「HOUSEPLAYING No.01“VIDEO”」(FLASH/神奈川/2022) など。