つくられないこと,あるいは巨大さ

氏名
松井一将
所属
東京藝術大学大学院
美術研究科 建築専攻
研究室
青木淳研究室
作品概要

建築という言葉は一般的に、完成した建物を指して使われることが多い。そしてそこには、出来上がった建物こそが目的であり、設計のためのメディア、あるいは図面を描く・模型をつくるといったような、身体をともなった設計者の行為は、あらかじめ設計者の中にある構想を実現するための単なる手段に過ぎないのだという暗黙の了解が含まれているように思われる。
そしてそこで想定されているのは、図面や模型を道具として使いこなし、設計を意のままにコントロールする、揺るぎない主体としての建築家である。

しかし本当に設計行為は「単なる手段」なのだろうか

例えば図面と模型を使ってスタディを行うとき、図面でスタディしたものを模型に起こしてみると、思いもよらない空間が立ち上がってきたり、模型でスタディしたものから図面を引いてみると模型では見えてこなかった部材どうしの関係が発見されたりすることは、設計をしたことのある人ならば、誰でも経験したことがあるはずである。

そのようにして図面と模型とを行き来する過程で、ある時点での設計者の意図は、変化していく。あるいは、図面を引く・模型をつくるといった行為の中で、自分の設計したい「意図」を確かめ、生み出しているとも言えるだろう。

そこにあるのは「確固たる主体としての設計者」が図面を引いたり模型をつくるといった一方向的な関係ではなく、設計をコントロールしようとする設計者と、図面や模型といった、設計の過程でその都度現れてくるメディアとの、葛藤した関係である。

作品イメージ

Profile

略歴

2020 東京藝術大学美術学部建築学科卒業

2024 東京藝術大学美術研究科建築専攻修了