雑木林を活用した交流施設 - 埼玉県北本市南部地域を対象として -
- 氏名
- 梅川 元一
- 所属
- 筑波大学大学院
人間総合科学研究科 芸術専攻建築デザイン領域 - 研究室
- 貝島桃代研究室
作品概要
かつて埼玉県北本市南部地域は豊かな雑木林の広がる農村地であった。農家における燃料や肥料の供給源としてつくられた雑木林は、人々の営みとともに維持・更新されていた。しかし、昭和30年頃から始まった資源の近代化により雑木林は放置されるようになり、生活の一部として存在した人と林の有機的な関係は失われた。さらに、近年の人口増加にともない雑木林は宅地開発の対象となり減少しつつある。その結果、本地域は昔から住む農家の人々と宅地化によって入った新住民など多様な人々が混在している地域となっている。このような場所において、まちの歴史的特徴である雑木林を継承することはそこに住む人々の場所への愛着に影響するものと考えられ、地域が存続するうえで重要な課題である。そこで、本研究では埼玉県北本市南部地域を対象に文献調査、現地調査により雑木林における活用の特徴と交流の実態を明らかにし、交流施設をケーススタディとして提案することで地域の歴史的特徴と現代の住環境を活かした雑木林における新たな交流のかたちを建築空間として提案することを目的とする。本研究では北本市南部地域における雑木林において4つの敷地をケーススタディとして交流施設の提案を行った。雑木林を開く交流施設と旧集落の川から里山までの一まとまりをなすウォーキングルートを設定し、特徴の異なる雑木林をとりあげ、事例ごとに交流対象と雑木林の活用方法を定め検討、設計した。その結果、建築としては雑木林の維持管理を行っている市民団体と、その周辺施設を利用する人々のための交流施設として、雑木林から生まれる新たな交流を支える屋根と広場による空間構成を示した。