Elastic Morphology - 曲げ加工を用いた圧縮成形による木質架構の研究 -
- 氏名
- 馬場 雅博
- 所属
- 東京藝術大学大学院 美術研究科 建築専攻
- 研究室
- 金田充弘研究室
作品概要
本修了計画は、家具のデザインやプロダクションに大きな変革をもたらした、「曲げ木」を応用・発展させ、木質の3次元的な曲面構造体をつくることで、これまで得られなかった人と建築の関係や生産のしくみを提案することを目的とします。
用いる素材は1.6mmの薄いプライウッドです。切り出した部材を一晩水に浸し、翌日煮沸して熱を加えた状態でベンディングし、90度回転させて合わせることで、薄く脆い素材であってもX軸とY軸それぞれに面として剛性の高い3次元的な木質ユニットができます。このユニットは従来の曲げ木のように型を必要とすることはなく、上下のパーツが合わさることで、互いの治具、型の役割を果たし、かたちが生成されていきます。
幾何学的には4つの拘束点によりユニット内部でトラスの働きをすることで剛性を高くしています。上下のユニットで拘束点の距離を変えることで水平から曲面に変化する自由度の高い架構システムです。また、曲げによって生まれるユニット間の隙間は照明・空調など設備スペースとして用いることができ、小さなスペースを多様な目的に使える発展性を考慮しました。
この建築モデルは、曲げ木とその曲げ木どうしの拘束点により剛性を担保していますが、拘束点から遠い部分は柔らかさを残します。つまり、一つのユニット内に柔と剛、相反する性質をもつ建築モデルであり、さまざまな事象を許容する建築や都市にこそ未来への可能性をもつと考えます。