都市の航海記録 - 咸臨丸が伝える浦賀町の変容と造船の記憶 -
- 氏名
- 増田 裕樹
- 所属
- 東京都市大学大学院 工学研究科 建築学専攻
- 研究室
- 手塚研究室
作品概要
船は短命であり、彼らが歴史の教科書に載る事はないが、しかしその営みの一つ一つが世の中の動きと繋がっていることは事実である。この咸臨丸という船は日本で初めて太平洋を渡った船である。この船が置かれる浦賀ドックは咸臨丸が生きていた時代にはまだ存在しなかったが、咸臨丸と共に日本が世界へと船出をした非常に重要な場所である。しかし10年以上町の空洞になっている。そこでドライドックと咸臨丸の再生を組み合わせる事によって、日本がいかに世界へと船出をしたかを伝える場所としてドライドックを再生する。造船所というコンテクストと特異な敷地形状から、造船技術に着目し、博物館建築の構造へと応用した。展示室内には史料が置かれるが、造船技術によって空間が作られる事で、建築物それ自体が、船というものがどういうものであったかを伝える史料となる。造船所の閉鎖と郊外化によって町のアイデンティティが希薄になりつつある浦賀町において、咸臨丸の生きた5000日間が伝える町の過去を知る事を礎に、町らしさの現在地と将来を再考させる提案である。