Gallery作品詳細
変貌にまつわる喜劇
- 氏名
- 入江 慎
- 所属
- 東京理科大学大学院
理工学研究科 建築学専攻 - 研究室
- 安原研究室
- 作品概要
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必要以上に隠す。しかしそれとは裏腹に「見える」。例えば、ヴィクトリア朝の女性用コルセット。衣服とはそもそも肉感性を隠伏させるためのものであるはずが、その過剰な操作故、逆に変貌した別の肉感性を顕在化させてしまうようなある種の逆説的な現象性に満ちている。このような現象を建築の「開き/閉ざし」という作り方の視座にできないだろうかと考える。それは単純に開かれた場所でも、ただひたすらに閉じる場所でもないような、いわば或る「閉ざし」を作ることが同時に逆説的な「開き」も作り出す、そんな関係性を孕んだ建築である。
私が本修士設計で取り組んだことはひとえに「建築の開き方・閉ざし方」についての試論である。現代ではブラックボックス化されることが当たり前となっているような建築にもそれにアジャストされた外部との関係の仕方があり、単純に開口を大きくとり、アトリウムを広場的に接続させることだけが建築を開くことではないのではないか、という考えが本修士設計の始まりであった。そして、鶯谷という場所が持っている「現象的な領域の接続の仕方」と対象とした人物たちの「変貌にまつわる行為」の二つをヒントに単純に開くのでもなく、閉ざしきるのでもないようなある種の朧気な関係性を作り上げた。一般的には閉ざしが必要な建築でも、このような関係性がデザインされることで拡がりを獲得できるのではないかと考えた。