第21回 JIA関東甲信越支部 大学院修士設計展 2023

対立概念の補完による建築的中間の展開

氏名
小泉知碩
所属
東京工業大学大学院
環境・社会理工学院 建築学系 建築学コース
研究室
村田 涼 研究室
作品概要

近年の文化施設では、参加・体験が重要視され機能の多様化が進んでいる。このような複雑・複合化する与条件において、「中間領域」という概念は相異なる場所を関係づけ、空間や機能の対立を解消する方法として現在も広く用いられている。しかし、そこで思考されるべき対立という概念は様々な階層を有し、さらにこれらは建築要素との実体的な対応が図られることで、領域における位相関係に留まらない「建築的中間」という方法論へと展開する可能性があると考える。そこで本研究では、諸分野における論考の概観を通して方法論的モデルを構築し、さらに、国民と国家の中間とも言える政府機関として歴史資料の保存と利用促進を担う諸機能の複合施設である国立公文書館の新築構想を通して、多種多様な対立関係が包摂され共存する公共建築の可能性を提示する。
保存・閲覧・研究・展示という基本的な機能を基に全体を計画し、各所に生じる対立を補完する。例えば正面ファサードでは、上階の管理機能と下階の保存機能の対立に対応して、スレートとガラスのモザイク模様が遠景ではグラデーションとなって「途中の性格の中間」を、近景では一枚一枚が視覚化され「位相をずらす中間」をつくる。このような様々なスケールや階層を備えた建築的中間を各所に展開することで、諸機能や人々の体験が相互に関わり合い、市民の利用を促進する柔らかな公共建築が創出される。

作品イメージ

Profile

略歴

茨城県 牛久市 出身

東京工業大学 建築学系 卒業

東京工業大学 環境・社会理工学院 建築学系 修了