昨今の人口減少局面において、かつて大量の住宅供給を目的に開発された郊外戸建住宅地はもはやその役割を失い、街そのものが使い捨てられる危機に瀕している。そんな郊外戸建住宅地に次世代の役割を付加し、“人の活動が持続する街”へ、更新していくための「新たな住宅の設計手法」を提案する。
高度経済成長期以降に計画された郊外戸建住宅地では、居住者の高齢化や人口減少に伴う住宅ストックの増加が課題となる中、現代の多様なライフスタイルに合わせた住宅活用が増加している。その一方で、開発時に住宅と一体的に計画されたオープンスペースは、更新が追いついていない現状がある。これら戸建住宅地の現状を踏まえ、本提案では、既存オープンスペースを「周辺住宅の利便性向上、環境改善のために誰でも利用可能な場」として位置付け、オープンスペースを活用した「非専用住宅」を設計する。オープンスペースの活用に伴い、戸建住宅地内の住宅における「接道条件」「配置計画」「開口部の設え」の３つの構成が変化する。また、オープンスペースを活用した非専用住宅の増加により、さらに多様な住宅活用が許容される街へ、戸建住宅地の地域特性が変化していく。
オープンスペースのような、既存戸建住宅地の持つポテンシャルに注目し、現代のニーズに合わせた活用方法を検討することは、住宅ストック問題改善の一助になり得ると考える。