建築はあらゆるものと関係しながら成立している。関係することで多様な価値観を持ち込み建築を豊かにすることができる。しかし、関係のみで全てを捉えていては建築およびオブジェクトそのものとしての純粋な価値は取りこぼされてしまう。本提案では関係性を包含しながらオブジェクトの在り方を追求する。
オブジェクトの存在が我々に対してどのように現れるか（用途、形態、仕上げ、記号、雰囲気…）を「様相」、他のオブジェクトに与える効果作用を「指示」として記述し、この二つの概念によって身の回りのオブジェクトを定義する。オブジェクトの様相・指示を互いに交換、過剰にしあうことで、その体験のうちに「ズレ」を発生させ媒介性を獲得する。オブジェクトの本性の暗示、連鎖的なスタディ、場の生成と横断という３つの媒介性は、オブジェクトそのものと生活者との関係性の統合的な追求を可能にし、それにより現代の関係性に偏重した設計態度からの脱却を図る。
本提案では私が生活者として最もオブジェクトの実情を知ると同時に、リアリティを持ってクライアントの要望に応答可能な生家の改修案を通して、設計手法の有用性を検討する。このオブジェクト達と接触する全てのヒトはその不可思議さに襲われながら、その関係性のネットワークへと組み込まれていくだろう。