創生物尺度による設計論
- 氏名
- 八木このみ
- 所属
- 東京理科大学大学院
工学研究科 建築学専攻 - 研究室
- 栢木研究室
- 作品概要
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「傷は自然の彫刻である」小説家、開高健のエッセイのなかの言葉である。建築の素材の傷は、劣化ではなく、経年変化であり、人間と同じ様に日々変化していく。「建築は時間を表すそのもの」であり、積み重ねた時間の表れが記憶とリンクした時に「愛着」として受け入れる事ができる。
私は、この感情、つまり「記憶」を設計においての基本尺度とし、生活をそのまま継承していきたい。特に長く存在し続ける場は、最も活動が連続的に繋がり、より多くの連続的に繋がる記憶が存在している。この記憶の連続性は、時間の変化とともに可変性があり、固定化されていない。よって、記憶の尺度は、不変のメジャーではなく可変な生物的なものとなりえる。この可変な記憶の尺度を、「創生物尺度」とする。創生物尺度の形成方法は、日本古来の記憶の可変物である妖怪の作られ方を応用していく。妖怪の創出の元は、日常の行いや出来事の「実」から、物語による文脈継承により確立される。「実」から始まる物語による「虚」の連続が、言い伝えにより「実」となり、現実と現実を繋いでいる。この段階を3つに分け創生物を読み解いていく。
創生物尺度による設計は、歴史と自然と人間の流動的な関係性を作り、連続した新たな更新方法となりえる。創生物尺度が建築のその場を醸成させる一助となる事を期待する。