建築のイメージとは、場所から特有の観念を読み取り、建築で強調/抑制することで訪れたひとに共有するそのプロセスに漂うと考える。
本論では場所の持つ観念を他人と共有することを、それぞれ個人がもつ生活時間をその場所のもつ時間軸に調速することと捉える。
日常とは異化された空間体験の連続はもう一つのちいさな日常になり、現在を生きる誰かにとってかけがえのない時間だ。今回は鎌倉でそういった時間を考えてみる。
鎌倉における観光の起源は八幡宮と谷戸の長勝寿院の関係にある。
当時の政治の中心の時間と、死者の静謐な時間が、谷戸を境に隣り合っていた。時代の中心が江戸や東京に変化しても鎌倉には現代とは異化された時間が流れ続けており、それを求めて人は観光に来る。
それはある意味、日常生活からの避難でもある。避難するとは鎌倉にきて特有の歴史的都市体験をすること、すなわち異化された時間のトレースをすることだ。
このプロジェクトでは異化された時間へのトレースを引き起こす建築、およびアクセスする時間軸を拡張するプログラムの提案であり、これにより鎌倉観光文化の根源的な意味を再構築し、かつ現代社会から異化された時間を体験できる避難所としての観光都市の在りかたの提案である。