ベッドタウンは急速な開発により、計画のずれのような無用な場である“トマソン”が多く存在する。そうした状況が日常に存在する街で育った生活者はトマソンを活用し行動範囲を拡張する。このように生活者が“トマソン”に“機能”を加え“環境化”させている場を「環境トマソン」と命名した。植物の生えていない花壇をゴミ集積所に変容させる様な場が当たり前に存在している街の生活者は洞察力や発想力に長けており、こうしたこの街の無用に機能を見出す能力を少々唐突ではあるが超能力として捉えた。また住宅における無用な場を環境として変容させる手法である「エスパーアーバニズム」を提唱する。現在ベッドタウンの住宅は子供が巣立ち家の空洞化が進んでいる。そうした住宅の無用になった空間を生活者の超能力を用いて環境化させる足がかりを整える。生活者の誰が所有しているのか分かりにくい状況で環境トマソンが生まれているという特徴を踏まえ、住宅における所有区分を曖昧にする操作を行うことで生活者が介入する余地をつくる。環境化をきっかけに家と街の境界が曖昧になり、生活者の馴染みのある場が増えることで、故郷を感じることのできるベッドタウンを形成する提案である。