参加型建築設計において、住民参加がおこなわれる建築段階や、住民の参加方法はさまざまあるが、本プロジェクトでは建築設計手法における運営段階での住民参加を想定し、施工後、住民自らが状況によって空間を可変させて使える小建築作品の設計及び自主施工をおこなった。近年、地域のコミュニティ形成や維持が難しくなっているなか、小建築作品が、周辺住民同士のつながりをつくり、コミュニティが育つきっかけとなることを目指している。
敷地は都内文京区後楽園駅からほど近い、低層住宅密集地に建つ築60年ほどの木造2階建て住居と敷地内通路。敷地内通路は、車が通ることのできない路地となっており、周辺住民が日常的に歩いて通行利用する空間である。設計・施工した小建築作品は、周辺住民が集まる人数や目的に応じて、シンプルな木のフレームのなかで、さまざまな高さレベル(766～399mm)に横材と天板をはめ込む(椅子やテーブルとして機能)ことで、平面のレイアウトを自由に変えることができる。
作品は、シンプルなフレームであり、柔軟に変化する空間であるため、周辺住民によって日常的かつ継続的に使われながら、共通の居場所になっていくと考える。また、Grove Dubを通して、水谷研究室が今後も継続的に地域に関わることで、住民参加を前提としたまちづくりへの働きかけをおこなっていきたい。