3.ドライミストの開発

3.1 構想と実験
 コンソーシアムの開発テーマが示すように、ドライミストの開発構想は「オーバーヒートした都市の気温を下げる」ことを主目的としています。開発にあたっては、歩道を通行する人々の頭上からミストを噴霧することや、広く普及するための条件を前提にして次の3点に目標を置いて進めました。
   1.省エネシステムであること
   2.人に不快感を与えないこと
   3.女性の化粧落ちがしないこと
 このような考えのもとに、平成15年から平成16年の2年間にわたって、ミストと人の官能との関係調査、噴霧技術、制御技術の開発を行ないました。

3.2 効率的な噴霧方式
 ミストを作り出す方法には、霧吹きのように空気を吹きながら水を吸い上げ、同時にその空気の力を借りて小さな霧にする方法(二流体方式)がありますが、空気自体を圧縮するためのエネルギーが必要となり、その分だけ余計なエネルギーが必要となります。
  一方、直接水に圧力をかけて噴霧する方法(一流体方式)があります。高圧で微細なミストを噴霧するドライミスト専用のノズルの開発を行った結果、効率的に微細なミストを連続的に噴霧することが可能となりました。この一流体方式は、二流体方式に比較して動力比で1/6の省エネを達成しています。

3.3 心地よいミスト
人の不快感には、見た目の心理的な要因と実際に身体が濡れる問題があります。
相対湿度が高い状態で噴霧したミストは、蒸散せず、そのまま空中にとどまります。このように、ミスト噴霧量と蒸散速度がバランスしないときは、ミストが霧のような状態になって周辺に留まることになります。人に不快感を与えないためには、必要以上に噴霧を行わないことが重要です。
このため、ドライミストの噴霧にあたっては相対湿度の監視を行い、不必要な噴霧を行わない制御をしています。また、風の監視、降雨の監視もおこなっています。
 (1)風の監視
  風の監視は2つの点で重要です。風が吹くときは、人にとってはそれだけで涼しく感じる要因になります。人の
  肌の水分(汗)を速やかに蒸散させてくれる風に、ドライミストを運転させて湿度を増加させることは無駄なエ
  ネルギー消費となります。
  また、風の影響によって、ミストを噴霧する空間が乱れると、期待した空間内でミストが蒸散せず、空中に散っ
  てしまうため、ドライミストによる涼しさを体感しにくくなる場合があります。
 (2)雨の監視
  ドライミストは湿度の監視をしているため、当然「雨」が降ればいずれ「湿度」が上昇して噴霧を停止しますが、人
  の感覚は、1粒の雨でも「雨降り」と感じるため、早めに「噴霧不要」と判断することが必要になります。
  本降りになったときもドライミストが噴霧され続けていることは、「快適性」をそこなうことになります。降雨セ
  ンサにより、人が「雨!」と感じる時にドライミストは噴霧を停止することができます。

3.4 濡れないミスト
 「化粧落ち」は一つの例えですが、霧の中で「濡れた」感触は多くの人に受け入れられません。
 噴霧されたミストが完全に空間で「気体」に相変移できないとき、「水」のまま人の肌に触れることもあり、空中で蒸散させるか、人の肌に触れてもすぐに気化することが必要です。
 この課題は、高圧にした水を直接噴霧することで解決しました。作り出された微細なミストを一定の気温と湿度の下で噴霧すれば、人の肌に触れたミストは速やかに気化し、自然の涼しさを与えることができます。噴霧開始から停止まで、濡れた感覚がないミストと言う意味で「ドライミスト」の性能が発揮できます。

  写真2 衛生的なドライミストは
      飲食場所の上部にも設置可能