4.システム

4.1 システム構築
 ドライミストの運用には、ミストの噴霧技術にあわせて最適な条件下での噴霧を行うことが重要です。始めに掲げた3つのテーマを実現するには、制御方法を確立する必要があります。
 平成17年の愛・地球博で運用されたドライミストは、試験的な要素はありましたが、システム構成はその前の2年間の開発実験の中で確立されたものです。
  開発したドライミストの特長的な機能には、2つの要素があります。
(1)噴霧のON/OFF制御
  ドライミストが設備設計上最も特長とする点は、噴霧ノズルを通行者の頭上に直接設置できる、という点です。
  このためには、噴霧の開始から停止まで、一貫してノズルから液滴が垂れることがあってはなりません。特に噴
  霧開始時、噴霧停止時にはこの問題が発生する可能性があり、ノズルの構造と電動弁の動作シーケンスにより解
  決を図りました。
  この制御によって、ミストの噴き始めから「ドライ」であり、停止後の「ボタ落ち」も発生しないシステムを実現し
  ました。
(2)噴霧条件による制御
  ドライミストの能力が発揮できるときに噴霧を実施するために、外気の気象条件を監視します。観測した情報と
  ミスト噴霧制御条件を比較することで自動運転を行なっています。
 1. 気温の条件
   ドライミスト設置場所の気温により、噴霧開始の条件を定めます(噴霧開始温度)。また、噴霧による温度低下
   もしくは気温の低下時の噴霧停止条件を設けます(噴霧停止温度)。
 2. 湿度の条件
   ミストが過飽和になることを避けるため、噴霧停止とする上限湿度を設けます。
 3. 風の条件
   一定の風速があるときは、人が涼しさを感じることがきることを考慮し、噴霧を停止します。
 4. 雨の条件
   わずかな降雨であっても、ドライミストが不快感を与えるような状況になることを避けるには、湿度上昇を待
   たず、雨粒を検出してから一定時間後に噴霧を停止させます。
 これらの環境監視の機能を備えた「ドライミスト」システム構成を図2に示します。

図2 ドライミストのシステム構成

4.2 効率的な噴霧方式
 システムを構成する主な機器には以下のものがあります。
(1)ドライミストノズル
  高圧の水を直接噴霧し微細なミストを作るノズルです。噴霧の停止時の液垂れを防止する機能を備えています。
  ノズル1つで3.0L/h(圧力6MPa)の噴霧能力を持ち、複数個を組み合わせて噴霧空間に適切な量のミストを散
  布します。
(2)高圧ポンプユニット
  水を高圧に加圧して吐出できるポンプです。貯水槽を備え、給水が不安定な場所にも適用できます。
(3)電動弁
  6MPaの高圧水の閉止および通水ができる高圧用電動弁を採用しています。3台の弁の動作シーケンスには、
  噴霧開始、噴霧停止、緊急時対応などのパターンがあります。
(4)気象センサ
  環境条件を観測するため、屋外用温湿度計、風速計、降雨センサを設けています。
(5)ドライミスト制御盤
  環境条件にしたがった噴霧の開始、停止を行います。内部時計を備え、早朝の噴霧、日中の噴霧の時間管理が
  できます。
  観測した環境条件(気象データ)や電動弁、高圧ポンプユニットの動作状態を盤内メモリーに記録します。これ
  らのデータを後日パソコンに読み出すことで、ドライミストの運転状況や効果の解析が可能です。